お腹の不安「過敏性腸症候群
(IBS)」と向き合い方
お腹の不安
「過敏性腸症候群(IBS)」と向き合い方
「検査では異常なし」と言われても、お腹の調子が優れない。
現代社会では、このような悩みを抱える方が非常に増えています。通勤中や大切な会議の最中にお腹の不安がつきまとう……。今回は、現代病の一つとも言える「過敏性腸症候群(IBS)」について、その複雑な病態から最新の治療法まで詳しく解説します。
1. 過敏性腸症候群(IBS)とは何か?
過敏性腸症候群(IBS)は、血液検査や内視鏡検査(大腸カメラ)を行っても、炎症や癌といった目に見える異常(器質的疾患)が見つからないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感、便秘や下痢が長く続く病気です。
日本の人口の約10%〜15%、つまり「およそ10人に1人」がこの症状を抱えていると言われています。命に関わる病気ではありませんが、生活の質(QOL)を著しく低下させてしまうのが、この病気の辛いところです。
2. なぜ起こる? 鍵を握る「脳腸相関」
現在ではIBSのメカニズムは科学的に解明されつつあります。その中心にあるのが「脳腸相関(のうちょうそうかん)」です。
脳と腸の「密な連絡」
私たちの脳と腸は、自律神経やホルモンを通じて常に情報をやり取りしています。IBSの方の体内では、この連絡網が「過剰に敏感」になっています。
内臓知覚過敏
健康な人なら気にならない程度のわずかなガスや便の移動を、IBSの方は「痛み」や「不快感」として脳に伝えてしまいます。
セロトニンの関与
神経伝達物質「セロトニン」の90%以上は腸で作られます。ストレスで過剰に分泌されると、腸の動きが乱れ、下痢や便秘を引き起こします。
3. IBSの4つのタイプ
ご自身がどのタイプに近いか知ることは、治療法を選択する上で非常に重要です。
- 下痢型: 突然の激しい腹痛とともに下痢が起こるタイプ。男性に多い。
- 便秘型: お腹が張って苦しく、便が硬くて出にくいタイプ。女性に多い。
- 混合型: 数日おきに下痢と便秘を繰り返すタイプ。
- 分類不能型: 上記のどれにも当てはまらないが、症状があるタイプ。
4. 診断の目安:セルフチェック
最近3ヶ月間に、月に4日以上お腹の痛みがあり、以下に2つ以上当てはまる場合は注意が必要です。
※体重減少、血便、発熱がある場合は、他の重大な疾患の可能性があるため早めに受診してください。
5. 治療と改善へのステップ
目標は完治だけでなく、「症状をコントロールして、日常生活に支障がない状態にする」ことです。
① 食事療法(低FODMAP食)
腸で吸収されにくい特定の糖類を控える食事法です。小麦、タマネギ、牛乳、リンゴなどを控え、米、肉・魚、トマト、バナナなどを選ぶことで劇的に改善する方が多くいます。
② 生活習慣の改善
朝食を摂って腸のスイッチを入れ、十分な睡眠で自律神経を整えます。適度な運動はガスの排出を助けます。
③ 薬物療法・心理療法
最近では、腸の動きを整える薬(ポリフル等)や下痢型の特効薬(イリボー等)など、優れた治療薬が登場しています。また、不安のループを書き換える「認知行動療法」も非常に有効です。
希望のメッセージ:焦らず、自分のリズムを見つける
過敏性腸症候群は、真面目で責任感の強い人がなりやすい傾向があると言われています。お腹の痛みは、あなたの体が出している「少し頑張りすぎているよ」というサインかもしれません。
- 「今日は調子が悪いけれど、明日は大丈夫」というゆとりを持つ
- 自分に合った対処法を専門医と一緒に見つける
- 焦らず、一歩ずつ自分のリズムを取り戻す
もしお一人で悩まれているなら、まずは消化器内科や心療内科の門を叩いてみてください。この記事が、あなたの「お腹の安心」を取り戻す第一歩となれば幸いです。
